タマちゃんのお部屋
猫の主な病気
 どんな病気も、早期発見早期治療が基本です。「そのうち治るだろう」という甘い考えは捨てて下さい。こじらせれば治療にも時間がかかり、良いことはひとつもありません。「おかしいな」と感じたら、即、獣医さんにご相談を。何でも気軽に相談できる先生を、日頃から見つけておくことが肝心です。
 猫には7つの恐ろしい伝染病があります。ワクチンの接種で感染を防げるものは防ぎましょう。また、繁殖を目的としない限り、避妊や去勢手術をして下さい。殺されるために生まれてくる命を作らないために、バースコントロールは飼い主の義務です。猫の健康のためにも良いことがたくさんあります。
 ここでは猫の主な病気をご紹介します。しかし、あくまでもこれは基礎知識。勝手な自己診断は命とりです。私たちにできることはあくまでも“予測”であって、“診断”は信頼できる獣医さんにおまかせしましょう。わからないことはどんどん先生に質問して下さい。治療方針を先生と話し合い、決めたことはしっかりと守って下さい。勝手な判断で薬を止めたり飲ませたりしてはいけません。困ったことがある時は、先生にご相談の上、対処していきましょう。
猫の7大伝染病
 猫の伝染病はたくさんありますが、その中でも恐ろしい病気の7つをご紹介しておきます。猫を飼われている人は、必ず読んで覚えておいて下さい。7つの中でワクチンで予防できる伝染病はは4つ。室内飼いの場合でも、感染力の強いウイルスは完全に防ぐことはできません。大切な猫のために、予防できるものは予防しておきましょう。

「猫伝染性腸炎」
 正式には「猫汎白血球減少症」といい、「猫ジステンパー」とも呼ばれます。白血球が極端に減少し、食欲不振や発熱、下痢や嘔吐が見られます。放置すれば細菌の二次感染によるか、または脱水症状を起こし、衰弱して死に至ります。
 非常に感染力が強く、死亡率も高い病気です。治療は抗ウィルス効果を期待してインターフェロンの注射や、二次感染を抑える為の抗生物質、あとは水分補給をして、猫の自己回復を助けます。3種混合ワクチンで予防することができますから、必ずワクチン接種をしておきましょう。
「猫ウイルス性鼻気管炎」
 いわゆる「猫風邪」。風邪によく似た症状で、食欲不振、くしゃみ、咳、鼻水、涙、目ヤニ、口内炎、発熱、下痢などの症状が見られます。治療を怠ると気管支炎から肺炎になり、また食欲不振も起こし、放置すれば衰弱して死に至ります。
 通常は2週間くらいで回復し、死亡率は高くありませんが、体力のない子猫や老猫には危険な病気です。また、回復しても体内にウイルスが潜伏し、キャリアーとなって他の猫への感染源となったり、免疫力が低下したりすると再発します。3種混合ワクチンで予防することができます。
「猫カリシウイルス感染症」
  「猫ウイルス性鼻気管炎」と同様、「猫風邪」といわれるものです。人間のインフルエンザのように、その年によって流行する型が違います。症状は「猫ウイルス性鼻気管炎」とほとんど同じですが、ウイルスの型によって異なります。猫の呼吸が荒くなってじっとうずくまっているようなら、かなり危険な状態です。
 回復すれば免疫ができるため再発はありませんが、体内にウイルスが潜伏し、キャリアーとなって他の猫への感染源となることがあります。3種混合ワクチンで予防することができます。
「猫白血病ウイルス感染症」
 リンパ系腫瘍や白血病を引き起こし、また骨髄機能の抑制や腎炎、免疫力の低下から他の感染症の併発を起こしたりする病気です。血液中の白血球や赤血球、血小板が癌化します。感染しても長期間発病しないこともあり、免疫力が強ければ治ってしまうこともあります。しかし、発病すればほとんどが死に至る恐ろしい病気です。
 初期には食欲不振や発熱が見られ、瞼や鼻の頭、唇などが白っぽくなって貧血を起こします。免疫力の低下から、傷が治りにくい、リンパ腺が腫れる、また、腎不全といった症状も。末期には全身のリンパ節に腫瘍ができて死亡します。ワクチンで予防することができますから、血液検査を受け、陰性であることを確認してから接種して下さい。
「猫免疫不全ウイルス感染症」
 通称「猫エイズ」。人間のエイズに似た症状を示しますが、全く違う病原体であり、猫から人間に感染することはありません。主に猫同士のケンカによる咬み傷から感染しますが、交尾後尾によっても感染することがあります。自由外出の猫は必ず避妊、去勢手術をして下さい。
 感染してから1ヶ月くらいで軽い発熱を起こし、リンパ腺が腫れたりしますが、数週間で回復し無症状キャリアとなります。やがてウイルスによって免疫が破壊され、他のウイルスや細菌に感染し始めます。発病後には慢性の口内炎、慢性鼻炎、蓄膿症、化膿性の皮膚炎などが見られ、発熱や下痢を起こします。ガリガリに痩せて他の感染症や悪性腫瘍を併発して死亡します。
 現在のところワクチンもなく完治することもできませんが、早期に発見できれば、発病を遅らせることはできます。たとえ発病してしまっていても、悪くなってしまう前に各症状ごとに対処療法を行うことは可能です。
「猫伝染性腹膜炎」
 感染しても発症する比率は約1割。軽い軟便や下痢で回復することもあり、飼い主も気づかないことがあります。しかし、抵抗力の弱い猫が感染すると死亡率の高い恐ろしい病気です。腹部や胸部に水が溜まると非常に危険。肝臓が侵されて黄疸が出たり、貧血や腎臓機能の低下、麻痺などの神経症状を起こすこともあります。これといった有効な治療法もありません。日本では未だワクチンが市販されず、接触感染を防ぐことしかできません。
「猫伝染性貧血症」
 正式には「ヘモバルトネラ症」といいます。ノミなどによって感染し、ヘモバルトネラ病原体が赤血球を破壊します。食欲不振や発熱が見られ、瞼や鼻の頭、唇などが白っぽくなって貧血を起こします。抗生物質の投与で治療しますが、猫白血病や猫エイズなどの免疫不全症と合併して感染したり、ストレス下に曝されると、一気に赤血球が破壊され、重度の貧血を起こします。
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目の病気
 絶えず目頭を濡らしている猫は「流涙症」が疑われます。感染症、涙器の奇形や疾患によって発生し、鼻の短いペルシャに多く見られます。また、眼瞼欠損、瞬膜の露出、角膜炎、急性緑内障や異物の混入などで、涙の量が多くなっていることも考えられます。
 猫の目の病気で一番多いのは、異物の混入や細菌感染による「結膜炎」です。治療しないで放置すると、猫が瞼を引っ掻いたりすることで二次的に眼瞼炎や瞬膜炎、角膜炎を起こしてしまいます。また、猫ウイルス性鼻気管炎などの伝染病が原因となっている場合もありますから、発熱や鼻水、食欲不振などが見られたら、悪化しないうちに病院へ。
 瞬膜は通常目の内側に隠れていてほとんど見えませんが、瞬膜が出たままになっている状態を「瞬膜突出」といいます。瞬膜炎が原因の他、栄養失調や発熱、自律神経失調症に伴って起こります。
 猫が目を引っ掻く時は、厚紙でエリザベスカラーを作って首に巻き、動物病院へ行きましょう。充血しているからといって、人間の目薬を差したりはしないで下さい。
耳の病気
 猫は耳の良い動物です。猫にとって耳はとても大切な器官なのですから、大切にしてあげましょう。耳の病気はこじらせるとやっかいなこともあり、ときどきチェックして異常がないか確認して下さい。
 猫の耳の病気で一番多いのは「耳疥癬」。耳垢が茶褐色に乾燥し、耳を痒がっているようなら検査を受けて下さい。耳を引っ掻くため、耳の付け根の皮膚を傷つけ、「皮膚炎」や「外耳炎」を起こします。また、耳の内側の皮膚を傷つけ皮下出血を起こすと「耳血腫」となり、耳がパンパンに腫れたりします。
 「外耳炎」になると膿や褐色の分泌物で耳が汚れ、悪臭がします。猫は耳を傾けしきりに耳を掻くようなしぐさを見せます。外耳炎が鼓膜を破って進行し「中耳炎」となることもありますが、中耳炎は鼻と通じている耳管から細菌感染して炎症を起こしているのがほとんどです。痒がることはなく、耳を傾けて痛がります。進行すると、歩くときにバランスを崩してよろけるようになります。
口の病気
 最近では猫の寿命も伸び、その反面、歯周病に悩まされる猫も増えています。「歯肉炎」は歯垢や歯石の沈着による細菌感染が多いのですが、口内炎、舌炎、口唇炎など、口の中の炎症から感染する場合もあります。猫白血病などの伝染病や内臓疾患などによって、口の中に潰瘍性炎症が起こることもあります。逆に、口の中の炎症が悪化して、病原菌が血液によって全身に運ばれ、心臓や腎臓などの内臓に悪い影響を及ぼすこともあります。
 口が痛いと食事ができず、食べなければ体が衰弱し、ますます治りが遅くなる‥‥。こうなるとホントに“口は災いの元”です。抵抗力の落ちた老猫ほど二次感染が起きやすいので、早めに歯垢の除去をしてあげましょう。
 「好酸球性肉芽腫」というのは、好酸球という血中細胞が原因で、猫の唇が突然えぐれたように削れてしまいます。上唇に多く、下唇に及ぶこともあります。唇だけではなく、腹部や足、耳などにも広がってしまうことも。アレルギーが関連しているといわれていますが、まだはっきりと解明されていない病気です。
食道の病気
 猫は何かと吐くことの多い動物です。吐いてもケロっとしているならば、心配はいりません。しかし、食事のたびに吐くとか、何度も吐く場合は問題です。「吐く」といっても実際には「嘔吐」と「吐出」ではやや違っています。
 食道に障害がある場合は食べてすぐに吐きます。ただし、食道のどの部分に障害があるかで、多少の時間差が見られます。口に近い部分だと、食べた物は食道を下ることができず、口に入れた物をそのままゲロっと吐き出します。これが「吐出」。食道の胃に近い部分に障害がある時は、ソーセージのような形で出てきます。「嘔吐」はたいていの場合、胃に異常がある時で、猫は体を波打たせるようにして、「ゲッコゲッコ」とうめきながら吐きます。
 「食道炎」は、胃液の逆流による刺激性物質によるものや、魚の骨などが食道を通る際に、粘膜を傷つけてしまうことで起こります。さらに異物が引っかかって通過できないと「食道閉塞」となり、傷がきれいに治らずでこぼこの痕跡を残すとその部分が狭くなって「食道狭窄」となります。また、腫瘍や先天的な奇形によることもあります。
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胃腸の病気
 猫の食欲不振を見抜くのはけっこう難しいですね。気が向かないから食べないだけなのか、用意した食事に不満があるのか、本当に具合が悪くて食べないのか‥‥。キッチンに立っただけでいつもダッシュで飛んでくる猫が、猫缶を開けてもじっとしたまま動かないような場合は、あきらかに「病気だ!」と判断できますが‥‥。
 消化器官の病気の多くは下痢と嘔吐の症状として現れます。嘔吐なら6時間、下痢ならまる一日絶食させ、少しずつ食事を与えてみて、それでも再発するならば、速やかに動物病院へ。
 猫が吐いた場合、まず疑われるのは「胃炎」です。胃の粘膜が、異物や薬品などで炎症を起こしたり、細菌やウイルスなどによっても引き起こされますし、異物や毛球症、寄生虫、食餌性アレルギーが原因となることもあります。嘔吐は食べ物と半透明の胃液や胆汁が混じった黄色っぽい液体、または、血が混っていることもあります。
 嘔吐が激しく、水を飲んでも吐くような時には「胃腸の閉塞」が疑われます。吐いた物に鮮血が混ざっているなら、胃に穿孔があることも考えられます。黒っぽい血なら、「胃潰瘍」や「十二指腸潰瘍」。胆汁が混じった黄色っぽい液体を吐く場合は、「胃腸管の閉塞性疾患」の疑いがあります。
 嘔吐と下痢が併発した場合は、「胃腸炎」や「膵炎」、肝臓などの「内臓疾患」、「ウイルスや細菌感染」、「寄生虫感染」など、様々な原因が考えられます。下痢に鮮血が混じっていたら、「大腸炎」や大腸、または直腸からの出血。黒っぽいタール状の血便なら、小腸からの出血が考えられます。しかし、全てがそうだとは断定できませんから、動物病院で検査をして下さい。
 下痢が長期に渡って続いていると、「直腸脱」を起こすことがあります。腸が翻反転して肛門から出てきます。直腸が出たままにしておくと、粘膜が乾燥し、血行障害を起こしますから、速やかに動物病院で処置してもらって下さい。
 「巨大結腸症」と呼ばれる結腸の拡大は、便秘を繰り返し、浣腸をして便を出してやらなければなりません。重症の場合は開腹して便を出したり、結腸を切除することもあります。便秘をしやすい猫には牛乳やバターを与えたり、繊維を含む食事を与えて下さい。動物病院で適切なフードを勧めてもらいましょう。
呼吸器系の病気
 呼吸器系は、鼻、咽喉、気管、気管支、肺、および、肺を包む胸腔を指します。猫の呼吸数は平常時で1分間に20〜30回。ゼイゼイと苦しそうだったり、ハッハッと浅く速いようなら、気管支や肺の異常が考えられます。
 急に鼻水が出たりくしゃみを連発する時は、「急性鼻炎」や「アレルギー性鼻炎」が考えられます。こじらせると「慢性鼻炎」から「慢性副鼻腔炎」になって、鼻水は鼻汁になり、頻繁にくしゃみをします。細菌やウイルス性の疾患が原因の場合、他の猫への感染を防がなければなりません。
 猫が咳をするようになったら、「気管支炎」や「気管支喘息」が疑われます。急性なら激しい咳が見られ、慢性化すると低い咳が続き、特に早朝に咳が出ます。花粉やハウスダスト、薬品、食べ物などでアレルギーを起こし、「気管支喘息」になることがあります。急激な発作で呼吸困難に陥ることもあり、放置すると死に至ることもあります。
 鼻炎や気管支炎が悪化し呼吸器下部に及ぶと、肺や胸腔の病気になります。「肺気腫」は肺にある空気が異常に溜まって膨張し、肺胞を破壊して呼吸困難になります。気管支炎や喘息が原因で起こりますが、事故などの衝撃で起こることもあります。
 「肺水腫」は気管支炎や肺炎などから「漿液」が肺に溜まり、咳と共にピンク色の液を吐き出します。熱射病や心臓病が原因で起こることも多くあり、呼吸困難を起こすと大変危険です。
 「肺炎」は、ウイルスや細菌などの感染、異物や薬剤の吸入などが原因で、肺の肺胞が侵されて起こります。食欲不振、発熱が見られ、呼吸が荒く、皮膚は紫色になり、放置すれば死に至ります。
 「胸膜炎」は、細菌やウイルス感染によって、胸膜や肋膜に炎症が起きる病気です。胸腔内に漿液や膿が溜まるのを「膿胸」といいます。高熱を出し、やたらに水を飲みたがり呼吸困難を起こします。外傷や異物によって肺が損傷し出血すると「血胸」となり、呼吸困難を起こし、吐血することもあります。速やかに治療を受けて下さい。
泌尿器系の病気
 腎臓で作られた尿は、腎盂から尿管を通って膀胱に溜まり、尿道を通って排泄されます。猫は泌尿器系の病気が多い動物です。トイレの掃除をまめに行い、食事や飲み水にも気を使ってあげましょう。早期発見のためには、健康な時の尿の回数や色、量、匂いを知っておくことが大切。とはいえ、排泄時にあまりジーッと見られているのは猫だって嫌ですから、こっそりチェックしておきましょう。
 ウイルスや細菌感染による炎症で「腎炎」「腎盂炎」「膀胱炎」「尿道炎」などが起こります。これらを総称して「尿路感染症」と呼びますが、腎臓から尿道まで尿の流れを通じて炎症が広がりやすいというのが特徴です。腎炎はトキソプラズマの感染や腫瘍によっても起こります。細菌性の尿路感染症は慢性化することも多く、治療も長期に及び、腎不全の原因となります。
 「泌尿器症候群」は、結晶や粘液等による栓子が血液の塊が尿道を塞いでしまい、尿の出が悪くなったり、全く出なくなったりする病気です。運動不足により飲水量が少なかったり、長時間排尿を我慢したり、食餌に含まれる結石成分が多かったり等、様々な要因が考えられます。ホルモン異常やストレス、ウイルスなど様々な原因が考えられますが、まだはっきりとした原因は解明されていません。
 猫のオシッコの回数は、普通一日2〜3回くらいです。それ以上に何度もトイレに入ったり、長い間しゃがんでいるのに尿があまり出ない、血尿などの症状が見られたら、泌尿器系の病気を疑って下さい。尿の量がわずかだと「尿毒症」を併発する危険性が大きく、尿が全く出ないと数日で死亡することもあります。
 若い猫に多いストルバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)結石の予防には、健康な時からマグネシウムの少ない食事を与え、猫がいつでも飲めるよう、新鮮な水を用意しておいて下さい。カルキ臭い水道水よりも、湯冷ましやミネラルウオーターの方が猫は好んで飲みます。泌尿器系の病気の治療においては、病院で処方される「処方食」意以外は与えないようにしましょう。緊急の状態が治まったからといって、完治する前に勝手に投薬をやめたりすると、再発したり慢性化してしまいます。
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生殖器の病気
 メス猫の生殖器の病気で特に多いのは、「子宮内膜炎」。悪化すると「子宮炎」になり、子宮に膿が溜まる「子宮蓄膿症」へと進行します。子宮内膜炎はブドウ球菌や大腸菌によって起こります。子宮蓄膿症は卵巣ホルモンの異常と関わりがあるといわれ、出産経験のない5歳以上の猫がかかりやすい病気です。
 初期には多飲多尿や食欲不振が見られますが、症状の出ないこともあります。病気が進行すると元気がなくなり、膣からの分泌物が見られます。分泌物は最初は透明ですが、徐々に膿状になって、色は白、黄色、ピンク、茶褐色など様々です。子宮蓄膿症の場合は子宮に膿状の粘液が溜まり、お腹が膨らんできます。重症になると子宮が破裂することもあります。
 生殖器の病気というのは、去勢や避妊手術をしていない猫に起こる病気です。繁殖させる目的がないのであれば、去勢や避妊手術を行って下さい。卵巣子宮全摘出手術を受ければ、年をとってから「乳腺腫瘍」になる危険性も減ります。
皮膚病
「細菌感染・真菌症・疥癬症」
 細菌や、カビの一種である真菌、ダニによって皮膚炎が起こります。白癬というカビによるものを「白癬症」といいますが、非常に感染力が強く、直接触れると人間にも感染します。円形の皮膚炎になり、丸く広がります。「ヒゼンダニ」というダニによるものを「疥癬症」と呼び、猫の耳や顎、目の周りなどに激しい痒みを引き起こします。人間にも感染しますが繁殖することはなく、症状は軽いのが普通です。
「アレルギー性皮膚炎・ホルモン性皮膚炎」
 どんな皮膚病も、検査による原因究明が第一。原因を突き止めなければ、根本的な治療にはなりません。アレルギーの原因となるのは、花粉やほこり、食べ物、ノミなど様々です。原因となる物質を特定し、できるだけ近づけないこと。食物性アレルギーの場合は除去食試験を行い、原因物質を特定します。
 ホルモン性皮膚炎は体内のホルモンバランスが崩れて起こります。皮脂腺の分泌に異常が起きて、「脂漏症」になり、乾燥性のフケや脂性のかさぶたができます。
増えている猫の生活習慣病と高齢猫に多い病気
 医療技術の進歩により、近年、猫の寿命も長くなりました。それに伴い、猫の生活習慣病も増えています。猫の老化は6歳くらいから。運動することも減り、肥満傾向が強くなってきますから、適度な運動と食事の管理が大切です。また、年に一度は健康診断を受けましょう。
「糖尿病」
 膵臓で作られる「インスリン」というホルモンが不足して、血液中の血糖が上がり、糖が尿と一緒に排泄されてしまう病気です。現代の猫は食事を与えられ、何不自由なく暮らして運動不足。当然、カロリー過多になって肥満になります。肥満は糖尿病や心臓病の原因となりますから、カロリーコントロールが必要です。
 糖尿病の初期症状は、よく食べよく飲み、よく出す。一見、まるで健康そのもののようで、見過ごしてしまいがちですが、水を飲む量が急に増えたり、尿の量や回数が多いと感じたら、とにかく検査を受けてみて下さい。糖尿病は早期発見早期治療が肝心です。進行すると元気がなくなり、食欲もなくなり、痩せてきます。脱水症状や黄疸が出ることもあります。さらに進行すると死に至ります。
「慢性腎不全」
 腎臓は血液を濾過して尿を作り、老廃物を排出し、体内の水分を一定に保つという大きな役割をしていますが、腎不全というのはその機能が低下している状態をいいます。高齢の猫には非常に多い病気です。しかも、なかなか症状が出ないため、発見が遅れがちです。症状が出るころには腎臓の3分の2以上が破壊され、危険な状態になっていることが多いのです。
 元気がなく、毛のつやがなくなって痩せてきたら要注意です。多飲多尿が見られるならば、まず腎不全を疑ってすぐに検査を受けて下さい。進行すれば、食欲がなくなり、水ばかり飲みます。顔がむくんでくるといわれますが、猫の顔がむくんでいるかどうかを見極めるのは至難の業。慣れた獣医さんならわかるといいますが‥‥。嘔吐を繰り返し、脱水症状が現れるとかなりの重症です。ただちに治療を施さなければ、死亡してしまいます。
 一度破壊された腎臓の組織は二度と元には戻りませから、残った組織を大切にしなければいけません。治療は薬物治療と合わせて食餌療法が中心となります。飼い主さんは食餌療法の重要性を意識して、医師の指導に従って、猫を処方食に慣れさせて下さい。
「肝臓病」
 カビの生えた食べ物や、脂が変質したドライフード、銅などの重金属、殺虫剤、化学薬品などの有害物質の摂取や、ウイルス感染、トキソプラズマ、回虫の寄生、または、先天性の病気やストレスなどなど、猫の肝機能障害の原因は様々です。肝臓の組織が徐々に破壊され、硬く萎縮した状態を「肝硬変」といいます。また肥満の猫は、食欲低下や廃絶が続くだけで脂肪が肝臓に蓄積して、「脂肪肝」となり、元気がなくなり黄疸や嘔吐等がみられるようになり、進行すると命に関わることもあります。
 肝臓病は初期の段階では、はっきりした症状がないのですが、有害物質を口にした時は、ただちに獣医さんの診察を受けましょう。肝硬変の場合、徐々に痩せてきて、進行すると腹水がたまって黄疸が見られるようになります。また、キッチンにダッシュで飛んできていた肥満猫が、食餌に見向きもせずうずくまっていたら、脂肪肝を疑って下さい。
「心臓病」
 循環器系の病気には、心臓の壁の筋肉に異常が起きる「心筋症」や、心臓のポンプの弁に異常が起きる「慢性心臓弁膜症」、拍動のリズムが速くなったり遅くなったりする「不整脈」、動脈に血栓ができ、血管を塞いでしまう「大動脈塞栓症」などがあります。やはり肥満猫は心臓や血管に負担をかける度合いが高く、肥満は循環器の病気の元凶でもあります。また、塩分の濃い食べ物も心臓に負担をかけることになりますから、猫に人間の食べ物を与えるのはやめましょう。
 猫は自分で症状を訴えることができませんから、正常時に脈を計ってみたり、心臓の音を聞いておいて下さい。少しでもおかしいと感じたら獣医さんの検診を。特に大動脈塞栓症は死亡率も高い危険な病気です。後ろ足がふらついたりしたら、即、病院へ。
「癌・腫瘍」
 人間と同じように、猫も体のあらゆる場所に腫瘍ができます。良性か悪性かは検査をしなければわかりませんが、検査に時間をかけるより、麻酔をかけられる状態であれば、腫瘍が発見されたらただちに摘出手術をしましょう。
 飼い主が比較的見つけやすいのは、皮膚や乳腺、耳、口の中にできる腫瘍です。避妊手術を受けていないメスの老猫に多いのが「乳腺腫瘍」。転移が速いので、見つけたらすぐに手術を。なかなか発見しづらいのは、リンパ肉腫、肝臓や腎臓の腫瘍、胸腔内腫瘍など。猫が抱かれるのを嫌がるようになったら要注意です。
「便秘」
 猫も年をとってくるとあまり活発に動かなくなり、運動不足で肥満気味。おまけに消化器の機能も衰えてきますから、便秘になりやすくなります。原因不明の結腸の機能障害により便秘となり、結腸の拡張と機能低下によって便が大腸に詰まってしまうと「巨大結腸症」になることもあります。
 おなかをマッサージしてあげたり、繊維を多く含む適切な処方食を与えて下さい。また、水分が不足しても便秘になりやすいので、お水も常にたっぷりと用意しておきましょう。
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ノミ・ダニ・寄生虫
「ノミ」
 猫を飼っている人ならば、一度は痒い思いをさせられるにっくきノミ。ノミにとって最も快適な環境は、気温18度以上、湿度70〜80%。ぴったり日本の夏の気候です。ノミはこの環境下では約3週間で卵から成虫になり、メスは一日10個、一生で1000個もの卵を産みます。
 ノミは刺されると痒いだけではなく、猫にアレルギー性の皮膚炎を起こしたり、瓜実条虫という寄生虫を感染させます。また、「猫伝染性貧血症」の感染にもノミが介在しているといわれています。あまりにもたくさんのノミに刺されて貧血を起こしてしまう猫もいますし、激しい痒みのためにイライラが募り、精神障害に陥ることだってあるんです。
 現在ではノミを完全にやっつけられるよいお薬もありますから、動物病院でご相談の上、最も適したタイプのお薬を選んで、撲滅してしまいましょう。
「シラミ」
 猫の毛の根元をよく見て下さい。もしも2ミリくらいの黄灰色の虫がいたら、「ネコハジラミ」です。このシラミは人間には寄生しませんが、猫同士で感染します。ノミに比べれば生命力は弱く、猫の体から離れてしまえば、4〜6日で死にます。治療は薬浴が効果的。何よりも清潔にするのが一番です。
「ダニ」
 猫に寄生するダニはたくさんいます。「マダニ」「ネコショウセンコウヒゼンダニ」「耳ヒゼンダニ」「ツメダニ」「ニキビダニ」「ツツガムシ」などなど。
 ネコショウセンコウヒゼンダニは猫の皮膚に小さな穴を掘って寄生し、「疥癬症」を起こします。感染すると激しい痒みのため、猫は掻きむしったり頭を振ったりします。発疹やかさぶたができ、脱毛を起こします。ツメダニは白いフケのように見え、人間にも感染します。円形状に赤い湿疹ができたら疑ってみて下さい。ニキビダニは、毛の根元の毛包や皮脂腺に寄生して「毛包虫症」を起こします。頭部にニキビのような炎症を起こし脱毛したり、細菌感染を併発することもあります。
 治療のために、まずはダニの種類を特定しなければなりません。その上で、最も適した駆除の方法をとります。
「寄生虫」
 猫に寄生する回虫は「犬小回虫」「猫回虫」「犬回虫」。猫の腸内に産み落とされた卵は便と共に体外に出ますが、それを他の猫が舐めることで感染してしまう場合や、幼虫の寄生しているネズミを猫が食べた場合などがあります。犬小回虫は胎児の胎盤感染、猫回虫は母乳から子猫に感染することも。回虫は体内を移動しながら成長し、腸で成虫になります。猫は嘔吐や下痢で脱水症状を起こしたり、貧血になることもあります。まれに幼虫が人の体内に迷い込むこともあり、眼球に入って失明することもあります。
 「条虫(サナダ虫)」は10種類以上あって、直接感染ではなく、ノミやネズミから感染します。大量に発生すると嘔吐や下痢を起こします。ノミがいたなら、間違いなく条虫もいると考えて、駆虫とノミの駆除を行って下さい。
 「コクシジウム」は小腸などの上皮細胞に寄生します。子猫が感染しやすく、発熱と血の混じった下痢を起こし、衰弱してしまいます。
 まず検便をして、虫の種類を特定してから駆虫します。わからないまま、勝手に市販の駆虫剤を飲ませたりするのはやめましょう。猫に触ったらまめに手を洗い、口移しでごはんをあげたりするのは厳禁です。親しい仲にも節度を持って‥‥です。
その他の病気
「黄色脂肪症」
 猫は魚が大好き。でも、サバやイワシなどの青魚ばかり食べていると、魚に含まれている不飽和脂肪酸を過剰に摂取してしまうことになり、ビタミンEが欠乏してしまいます。すると、脂肪に付着した脂肪酸が酸化してしまい、黄色く変色して脂肪組織に炎症を起こします。
 お腹の周りの脂肪が炎症を起こすと発熱し始め、やがて脂肪はデコボコしたしこりとなって痛み始めます。猫が抱かれるのを嫌がるようになったら要注意。進行するとしこりが化膿し、膿が皮膚を破って出てくることもあります。さらに進行すると、肝臓障害を起こし、腹水が溜まって死んでしまいます。
 どんなにわがままな猫でも、子猫の頃から偏食をさせないことです。食べ過ぎに注意しながら、バランスのよい食事を心がけて下さい。治療はビタミンEを中心とした食餌療法になります。
「毛球症」
 猫は起きている間、ひまさえあればペロペロと毛を舐めていますよね。口に入った毛は普通はウンチと一緒に出てしまうものですが、ときどき口からも吐いてしまいます。初めて猫を飼った人を仰天させるアレです。吐いてしまっているうちはまだいいのですが、胃の中で球状に固まって腸を塞いでしまうと大変です。予防のためにもブラッシングは欠かせません。長毛種の猫は特に気を付けましょう。あまりにもたびたび吐いたり、心配な時は毛球用のペーストもありますから、動物病院でご相談下さい。
「てんかん」
 てんかんを起こすと、突然手足を硬直させて痙攣を起こし、もがいたり暴れたり意識を失ったりします。発作には周期があり、周期は猫によって様々です。先天的な脳の異常による「真性てんかん」と、猫伝染性腹膜炎やトキソプラズマ、猫伝染性腸炎、脳腫瘍などの脳の病気、事故などによる頭部の損傷などによって起こる「仮性てんかん」があります。
 発作を起こしたということだけで死ぬことはありませんから、落ち着いて、発作が治まるのを待ってから病院へ行きましょう。発作を起こした時は、ぶつかって怪我をしないよう、周囲の障害物をどかして下さい。てんかんの発作を止める薬というのがありますが、副作用が強く、お勧めはできません。
猫から人間にうつる病気
「回虫」
 「寄生虫」の項でもご説明したように、回虫はまれにではありますが、人間にも感染します。ただ、常識を持った接し方さえしていれば、そんなに恐れることはありません。猫の検便をして、虫がいたら駆虫します。猫のトイレや寝床、お部屋の掃除もまめにしましょう。
「白癬症・真菌症」
 真菌や白癬は皮膚に生えるカビの一種です。猫も人も寄生された部分が丸く赤い炎症を起こします。
「疥癬症」
 ヒゼンダニによって起こるものですが、このダニは人間では繁殖しません。しかし、まれに接触によって皮膚炎を起こすことがあります。
「猫ひっかき病」
 猫に引っ掻かれたり咬まれたりした傷口から、パスツレラ菌が侵入して起こる人間の病気です。毒性の強い菌で、ほとんどの猫が口の中や爪の間に持っています。引っ掻かれたり咬まれたりした2〜3日後に、傷が化膿してリンパ腺が腫れ、高熱が出ます。治るまでに何ヶ月もかかったりすることもあります。
 しかし、傷が化膿したからといって、全てが猫ひっかき病ではありません。猫ひっかき病はめったに起こることのない病気です。猫に引っ掻かれたり咬まれたりしたら、傷口をよく水で洗い流し、消毒をして下さい。
「トキソプラズマ」
 トキソプラズマは、細菌より大きい単細胞生物で、哺乳類や鳥類などいろんな動物に寄生します。オトナの猫は感染してもほとんど発病せず、抗体が一度作られれば感染しても発病しません。ただし、子猫や体力のない猫の場合、発病して症状が重くなることがあります。
 人間に感染した場合はほとんど発病せず、抗体ができてしまいます。しかし、胎児に感染した場合は流産、死産、妊娠後期であれば精神薄弱などになることもあります。感染源は、トキソプラズマに感染した猫の2日以上経った排泄物、または、豚や羊の肉などです。
 以前、マスコミが騒ぎ立てたため、正しい知識が知られないまま日本中の妊婦を恐怖に陥れ、何の落ち度もない猫たちを不幸に陥れたトキソプラズマ。トキソプラズマは確かに猫からも感染する可能性はありますが、最も多い感染源は豚肉です。しかも、胎児に影響を与えるのは、妊娠してから初めて感染した場合のみ。母親から胎児へ感染する確立は、わずか33万分の1なのです。
 とはいえ、全くの0%ではないわけですから、ちゃんと予防しましょう。猫から感染するのは、トキソプラズマに感染した猫の2日以上経った排泄物に触れ、それが口から入る場合ですから、日に一度は必ず猫のトイレを掃除しましょう。掃除の後はよく手を洗って下さい。そして、豚や羊の肉はよく火を通して食べましょう。
 人間も猫も、トキソプラズマの抗体があるかどうか、簡単な検査でわかります。陰性なら過去に感染したことがなく、抗体がありません。陽性の場合は1ヶ月後に再検査し、抗体値が上がっていなければ抗体があるということで安心です。再検査で抗体値が上がっていたらトキソプラズマ症の疑いがあり、治療が必要となります。
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『タマちゃんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
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