ピョンちゃんのお部屋
ウサギの病気
 どんな病気も、早期発見早期治療が基本です。「そのうち治るだろう」という甘い考えは捨てて下さい。こじらせれば治療にも時間がかかり、良いことはひとつもありません。「おかしいな」と感じたら、即、獣医さんにご相談を。何でも気軽に相談できる先生を、日頃から見つけておくことが肝心です。
 ここではウサギの主な病気をご紹介します。しかし、あくまでもこれは基礎知識。勝手な自己診断は命とりです。私たちにできることはあくまでも“予測”であって、“診断”は信頼できる獣医さんにおまかせしましょう。わからないことはどんどん先生に質問して下さい。治療方針を先生と話し合い、決めたことはしっかりと守って下さい。勝手な判断で薬を止めたり飲ませたりしてはいけません。困ったことがある時は、先生にご相談の上、対処していきましょう。
毎日の健康チェック
・皮膚に傷やかさぶたなどはありませんか?
・脱毛や毛のパサつきはないですか?
・目やにはついていませんか?
・鼻水は出ていませんか?
・呼吸は正常ですか?
・口の周りが汚れていませんか?
・口臭はしませんか?
・歯が伸びすぎていませんか?
・耳の中はきれいですか?
・耳の中から異臭がしませんか?
・足の裏が腫れたり、傷はないですか?
・爪が伸びすぎたり割れたりしていませんか?
・おしりは汚れていませんか?
・糞の異常はありませんか?
・体重の変化はありますか?
・活発に動いていますか?

 病気によっては元気で食欲があっても症状が進行している場合もあります。「おかしい」と思ったら、早めに動物病院へご相談下さい。
ウサギの病気
「下痢」
 下痢の原因は様々で、単なる食べ過ぎ、環境の変化、細菌感染、中毒、寄生虫、腫瘍、肝臓病などです。下痢をしていても元気も食欲もあるならば、イネ科の干し草を主にしたエサに切り替えて様子をみてもかまいませんが、一日中下痢の状態が続いているようなら病気と判断し、早いうちに病院で診てもらって下さい。普段から糞の状態をしっかり観察しておきましょう。
「食欲不振」
 食欲不振の原因は様々です。毛球症や不正咬合、歯槽膿漏、肥満、膀胱結石、感染症などの病気、また、エサを変えたりエサの成分に繊維質が足りない、デンプン質が多いなど、エサの質に関係していたり、生活環境の変化などによることもあります。症状が軽ければ、野草や野菜、果物などウサギの好きなエサを与えてみます。それでも食べないようなら、病院で診察を受けましょう。
「毛球症」
 毛づくろいをした時の毛が胃にたまって毛球になって起こります。猫などは自分で吐き出すことができるのですが、ウサギはそれができません。腸にたまって腸閉塞を起こすこともあります。食欲の低下や糞の量の低下、便秘などが見られます。症状が重い場合には、手術で摘出することもあります。普段からブラッシングをしたり、繊維質の多いエサを与えるよう、また、運動不足にならないように気を付けましょう。毛球予防薬も市販されています。
「食滞・鼓張症」
 エサの食べ過ぎや急にエサを変えたりすると起こります。また、開花前のマメ科の野草をたくさん食べてしまうと起こる場合もあります。よく食べていると思ったら急にうずくまり、胃や腸にガスが溜まって膨れてきます。お腹がパンパンに膨れているような時は、とにかく急いで病院へいきましょう。普段から繊維質の多いエサを与え、エサを変える時は少しずつ新しいものを混ぜていくようにして下さい。
「コクシジウム症」
 コクシジウムという原虫に感染して起こります。「肝臓型」と「腸型」があり、肝臓型に感染すると肝臓が腫れて腫膿瘍ができることもあります。腸型の場合は出血性の腸炎になることが多く、食欲がなくなり衰弱します。下痢が激しい場合は死亡することもあります。子ウサギの場合は死亡率も高くとても危険な病気です。コクシジウムは健康なウサギでも感染している場合が多く、体力が低下した時に発病するので、日頃から健康管理に気を付けましょう。また、糞から感染するので、トイレの掃除はこまめにして下さい。ただし、ウサギには「食糞」の習性があるため、完治することは困難です。
「肥満」
 ウサギの体重は品種によって様々ですが、標準体重の50%以上を超過してしまうと「肥満」です。肥満は心臓病や不妊症、難産、内分泌系の病気などの元です。また、動きが鈍くなるために、怪我をしやすくなります。日頃から質とバランスのよいエサを与え、人間のお菓子などを与えないようにしましょう。時間を決めて遊んであげて、適度に運動もさせて下さい。週に1度は体重測定をしましょう。
「熱射病」
 ウサギは高温多湿に弱く、気温が29度を越えると体温の調節ができなくなり、体温が上昇して危険な状態となります。呼吸が荒くなりぐったりしていたら、耳や体を冷たいタオルでくるんだり濡らしたりして体温を下げるようにしながら、病院へ行きましょう。夏は涼しくて風通しのよい場所を選んであげて下さい。屋外で飼育している場合は必ず日陰を作りましょう。また、冷たい水も常に飲めるように用意しておきます。
「血尿」
 血尿の原因は膀胱炎や尿路結石、子宮炎などがあります。オスは結石になりやすく、その場合、オシッコをしたそうなのに出ないというような症状が見られます。ウサギの尿の色は食べた物で変わり、尿が赤くなっていても色素によることもありますが、念のため検尿してもらったほうがいいかもしれません。予防のため、十分な水や野菜をあげるようにしましょう。
「脱毛」
 脱毛の原因は、細菌感染、真菌感染、寄生虫、栄養の偏り、ホルモン異常、アレルギーなど様々です。皮膚に異常を見つけたら、悪化しないうちに動物病院で診てもらいましょう。治療には時間がかかる場合が多いですが、根気よく治療して下さい。普段から環境を清潔にするように心がけて下さい。皮膚真菌症は人間にも感染することがあります。
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「ダニ性外耳炎」
 ウサギキュウセンヒゼンダニというダニの感染によって起こります。しきりに耳を後足でかいたり耳を振ったりします。初期には耳の奥にフケのようなものが見られ、だんだん耳の内側にヌカ状のものが厚く付くようになります。また、耳から悪臭がします。複数のウサギを飼っている場合は別のケージに移すなど、完全に治るまでは他のウサギから隔離して下さい。感染したウサギが使っていたものは、すべて消毒して下さい。普段から環境を清潔にするように心がけましょう。
「斜頸」
 首を片方に傾けたままになり、同じ方向にグルグル回ったり転がったりします。中耳炎や内耳炎が原因のことが多く、耳の奥にある平衡器官が細菌によって侵されて起こります。まれに、エンセファリトゾーンという原虫の感染による「家兎脳灰白炎」が原因のこともあります。また、首を支える筋肉や骨を痛めていることもあります。原因となっている病気の治療をして下さい。病気が治れば斜頸自体は治らなくても元気に生活できます。
「不正咬合」
 歯のかみ合わせが悪いことを不正咬合といいます。ウサギの上顎第1切歯と下顎切歯は1週間で2ミリくらい伸びますが、普通は上下の歯で互いに摩擦され、均衡を保っています。しかし、何らかの原因でこの均衡が崩れてしまうと、歯が過剰に伸びてしまうことになります。先天的なものもありますが、適切なエサを与えていなかったり、老化、歯根への細菌感染などが原因です。食欲がなくなったり、よだれを垂らしたり、うまくエサを食べられない、激しい歯ぎしり、息が臭い、口の中が膿んで顎が腫れるなどの症状が見られます。放置するとエサが食べられなくなり、死に至ります。普段から歯の状態をよく観察し、異常があるようなら病院で診てもらいましょう。切断、または抜歯により矯正します。先天的な不正咬合の場合、繁殖はしないようにして下さい。
「脱臼・骨折」
 ウサギの骨は軽く薄くできているため、ちょっとした衝撃でも脱臼したり骨折することがあります。足を痛そうにひきずったり、地面に付かないように持ち上げたまま歩くような動作が見られたら足の骨折です。脊椎を骨折してしまうと、後足が麻痺し、動くことができなくなります。糞や尿も自力でできない、または垂れ流しとなります。脱臼や骨折の恐れがある場合は、すぐに病院で治療を受けて下さい。ただ、ウサギの骨の固定は他の動物よりも難しいといわれています。ウサギが落下したりケージの隙間などに足を挟まないよう、くれぐれも注意してあげて下さい。
「外傷」
 ウサギの皮膚はデリケートです。小さな傷なら自然に治ることもありますが、細菌が傷口から侵入し、炎症を起こすことがあります。見た目には小さな傷でも、皮下組織が侵されている場合がありますから、傷を見つけたらすぐに消毒し、炎症を起こしているようなら、すぐに病院で治療して下さい。
「飛節症」
 ケージの底が網状になっていたりすると、足の裏がこすれて傷になり、皮膚が壊死してかさぶたのような潰瘍になることがあります。ケージの底はすのこか1枚板にして、ワラやおが屑など吸湿性の良い素材を厚めに敷き、こまめに交換するようにして下さい。足の裏の傷を発見したら、早めに病院へ行き、治療をしましょう。
「腫瘍」
 腫瘍は体質にもよりますが、偏ったエサを与えていたり、老化によってもできやすくなるようです。皮膚や筋肉、内臓、骨などあらゆる部位にできます。初期にはほとんど症状がないため、特に内臓の場合は発見しにくく、手遅れになることが多いのです。確実な予防法はないのですが、普段から注意して体を触るなど、早期発見に務めましょう。どんなに小さくても、しこりを見つけたらすぐに病院で検査を受けて下さい。
「スナッフル」
 スナッフルはくしゃみと鼻水が主な症状の伝染性呼吸器疾患のことで、パスツレラマルトシダという細菌が主な原因で起こります。鼻炎から肺炎へと進行し、初期にはくしゃみと鼻水、進行すると呼吸音の異常が見られるようになります。重症になると斜頸や心膜炎、子宮炎、皮下膿瘍などを併発する場合もあり、死亡率も高くなります。再発率が高く、一度感染してしまうと完治が困難な病気です。普段から清潔にすること、温度や湿度の管理、栄養管理に気を付けて下さい。複数のウサギを飼っている場合はすぐに他のウサギから隔離し、感染したウサギが使っていたものは、すべて熱湯消毒して下さい。
優しく看病してあげよう!
 大事な家族であるウサギさんが病気の時、飼い主さんが正しく看病してあげましょう。屋外で飼育している場合は室内のケージに移して下さい。複数で飼育している場合は必ず別のケージに移し、伝染性の病気の場合は部屋も別にします。静かで落ち着ける部屋がいいのですが、ジメジメと一日中真っ暗・・・なんてことのないようにして下さいね。
 ウサギにとっての快適な温度は18〜24度、湿度は40〜60%です。病気の時は室温を23度、湿度は45%ぐらいにして下さい。また、パネルヒーター(サーモスタット付き)をケージの床に敷いて暖めてあげるのもいいです。ヒーターは23〜25度に設定して厚手のタオルを巻き、コードはかじらないように塩ビ管などで覆って下さい。床材もたっぷりと敷きます。
 看病ではまず食欲を回復してもらうのが大事。季節の野草や野菜や果物など、ウサギの視覚、臭覚、味覚を考えて工夫します。5〜7種類くらいの食べ物を用意してあげましょう。どうしても食べてくれない場合は、ミックスベジタブルを裏ごしし、パイナップルジュースや砕いたペレットを混ぜて強制給餌します。また青汁や野菜ジュース、ペレットをふやかしたものも良いでしょう。20mlくらいの注射器に柔らかく練ったエサを詰めて、ウサギの口角、または切歯と門歯の間から先端を差し込んで少しずつ口の中に入れていきます。
 薬については必ず獣医さんの指示を受けて下さい。素人判断で人間の薬などは絶対に与えてはいけません。薬を飲ませる場合は少量の果物や野菜のジュースに混ぜてシロップを作り、スポイトでウサギの口角からゆっくりと飲ませて下さい。
 病気や怪我のため動くことができないと、寝たままでオシッコやウンチをしてしまうこともあります。お尻が汚れていたらきれいに拭き取って、床材もこまめに取り替えましょう。ウサギは肛門周辺が汚れたままだと「ハッチバーン」という皮膚炎になってしまいます。
 体温は、動物用か小児用の体温計で、先端を肛門から2〜3センチ挿入して計ります。毎日一定の時間と回数で計って下さい。計る時はウサギが暴れたりしないように気を付けて下さい。
 何よりも大切なことは、ウサギが病気になる前に、ウサギをちゃんと診てくれる動物病院を探しておくことです。ウサギは犬や猫に比べて専門の獣医さんも少なく、具合が悪くなってから慌てて探しても手遅れになるかもしれません。ウサギの飼い方や病気について質問してみて、詳しく説明してくれる獣医さんを探しておきましょう。
 病院へ行く時は、予め電話で症状を説明し、予約をとっておきましょう。初めての場合は普段使っているケージごと連れて行くのがベスト。どんな飼い方をしているのか、ケージを見ることで獣医さんにわかるからです。すでに飼育指導を受けている場合は移動用のキャリーなどでもOKです。夏はムレないように、寒い時期には保温に気を付けましょう。ストレスを極力抑えるように、移動時間はできるだけ短く、静かに運んで下さいね。
明るい家族計画を!
 屋外のケージで1匹だけなら何の問題もないのですが、室内で飼う場合はたとえ1匹であっても不妊手術をされることをお薦めします。ウサギは性的欲求が強く、テリトリーを主張するためオスはあちこちにスプレー行為を行い、複数飼いの場合はメス同士でもケンカをしたり、室内のものを手当たり次第にかじったりします。もちろん、オスとメスを一緒に飼っていれば、あっという間に増えてしまい、飼育が困難になってしまいます。繁殖を考えていないなら、バースコントロールは飼い主の責任です。
 不妊手術の利点はオス、メスともに従順な性格になり、ケンカによる怪我やスプレー行為がなくなるため、ウサギを自由にしてあげられることが多くなります。また、メスでは乳腺腫瘍や子宮の病気にかからなくなります。獣医さんとよくご相談の上、できれば生後3ヶ月半〜6ヶ月くらいで手術を受けましょう。繁殖する場合は、予めもらってくれる人を探しておくなど、しっかりした計画が必要です。
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イラスト:山本久美子 いなだゆかり
『ピョンちゃんのお部屋』は、ブルーミントン動物病院と、動物関連情報サイトPetComNetが共同で制作しています。
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