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ブルーミントン動物病院
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里親探しは「獣医師広報版」
獣医師広報版

カラスと一緒に帰りましょ。
 カラスと人間の間に摩擦が多いのは、私たち人間にとって、カラスが一番身近な野生動物だからこそではないでしょうか? ゴミを散らかす、人を襲う、線路に置き石をする、幼稚園の石鹸を盗む、、、。中でも問題なのは、「人間襲撃事件」と「ゴミの喰い散らかし」。なぜそんなにやつらは私たちを困らせるのか、私たちはカラスと一緒には暮らせないのか、、、カラスと一緒に考えてみましょう。
ゴミとカラス
 現在、東京の市街地で見られるカラスはほとんどがハシブトガラスです。繁華街はもちろん、住宅地のゴミ置き場でもゴミをあさって喰い散らかす! あ~らら、きったないなぁ~。美感は損ねるし、不潔だわぁ~。しかし、カラスはなぜゴミをあさるのか?、、、それは、ゴミがあるから、、ですね。カラスが狙っているのは、夜出されたまま放置されているゴミ。朝、ゴミ収集車が来るまでに、カラスの朝食は終わっています。カラスに「もうちょっとお行儀よく食べてよねー!」と言っても、そりゃー無理。喰い散らかされたくなければ、カラスが朝食を採る時間にゴミがない状態にしておけばいいわけです。
 カラスがゴミをあさるということは、単に美感や清潔の問題だけではありません。自然界では冬の間、餌が少なくなり、弱い個体は淘汰されていきます。繁殖期に産んだ卵の巣立つ率も半分程度です。しかし、人間の出す生ゴミによって餌が豊富になると、カラスの死亡率は低く繁殖率は高くなり、カラスが爆発的に増えてしまうわけです。
 大阪や福岡などの繁華街では、夜間収集を行っているため、カラスの姿はあまり見かけません。東京でも夜間にゴミ収集をしたところ、カラスが激減したという地域もあります。しかし、一ケ所で激減しても、カラスがいなくなったわけではありません。また別の場所でおいしい朝食を食べているだけでしょう。夜間収集は確かに効果がありますが、かなりの広い地域で徹底して行わなければ、問題の解決とはならないのです。
 住宅地の対策としては、ゴミ置き場に妨鳥ネットや金網を設置する方法がよく見られます。これはその中にちゃんとゴミが納まっていれば有効な手段のようです。CDや一見カラスの死骸のようにも見える黒い物体をぶらさげているところもありますが、効果のほどはいかがなものか、、、。また、妨鳥ネットがあっても、ゴミがそこにきちんと納まっていなければ、カラスは隙間からゴミ袋を引っ張り出してしまいます。私の家の前はちょうどゴミ置き場になっているのですが、ここを利用しているご近所の人たちはちゃんとルールを守ってゴミを出してくれているので、カラスによるゴミの喰い散らかしはほとんどありません。カラスは人間のだらしなさのバロメーター、、、かもしれませんね。
カラスの襲撃
 「カラスが人間を襲う!」などとマスコミがセンセーショナルに書き立てるため、まるでヒチコックの『鳥』のように、「カラスが人間を狙って集団で襲って来る」かのように思われていたりしますが、実際にはそんなことはありません。カラスは他の鳥のヒナはもちろん、子犬や子猫さえ襲います。しかし、これは餌として狙っているわけですが、さすがのカラスも人間を餌として狙って攻撃するわけではありません。人間は赤ん坊でもカラスにはちょっと大きすぎます。ただし、赤ん坊をゴミ袋に入った生ゴミと間違えてしまうと“食べに来る”かもしれませんが、、、。
 東京では、春から夏にかけて「カラスに攻撃された!」という苦情が多くなります。これはカラスが繁殖期に入り、自分のテリトリーに巣を作っているからです。東京では1999年度で約500件、2000年度で約1300件のカラスからの攻撃や威嚇に関する苦情が都に寄せられました。これが“多い”のか“少ない”のか、、、わかりませんが、実際にそんなに大騒ぎするほど攻撃されているのか、、、というのは疑問です。「カラスは恐い」という先入観から、すぐそばを飛ばれただけで“攻撃された”と感じる人も中にはいらっしゃるのではないかと思います。「カラスの襲撃」の恐怖から逃れるには、私たちがそのメカニズムを知り、冷静に行動することも大切です。
 子育て中のカラスにとって、近寄って来る者は相手が鳥でも猫でも人間でも、自分のテリトリーを侵す侵入者であり、カラスは必死で侵入者から巣を守ろうとします。まず、「ガァー、ガァー」と鳴いたり、近くを飛んだりして威嚇します。木の枝をつついたり嘴で折ったりしているのは、かなり頭にきている証拠。この「それ以上、近寄るな!」というサインを無視して巣に近付くと攻撃されるのです。
 威嚇された場合には、速やかにその場を立ち去りましょう。巣のある場所では、カラスや巣のある方向を見ないようにして通り過ぎましょう。もし攻撃されたとしても頭をポカリと蹴られる程度ですから、落ち着いてさっさと逃げましょう。恐ければ、できるだけそこに近付かないですむ方法を考えてみましょう。多くの場合、帽子を被ったり傘をさすことで攻撃を防ぐこともできます。
 また、巣があるからといって、カラスが必ず攻撃してくるわけではありません。繁殖期の機嫌の悪さには個体差があって、人が近付いても何もしないカラスも多いのです。しかも、そういう温厚な(?)カラスの方が繁殖率が高いというデータもあるようです。これが本当ならば、機嫌の悪いカラスは徐々に減っていくと思われます。
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東京都のカラスプロジェクト
 幸か不幸か、石原東京都知事はカラスがお嫌いのようですね。何でもゴルフ場でひどい目に会ったとか、、、で、東京のカラスの数は現在推定で2万1000羽くらいだそうですが、これを3分の1まで減らす計画だそうです。(とは言え、元の数がはっきりわからないのに3分の1と言ってもね、、、。)まず生ゴミの絶対量を減らし、ゴミの出しかたにも工夫をしてカラスの餌を減らすと同時に、捕獲によって羽数を減らす、、、のだそうです。(ただ、捕獲によるは羽数減少については“当面は見合わせ”ということです。)
 しかし、1999年に行った繁華街での早朝収集では、“早朝”といいながら実際に収集される時間が午前7時ごろであったため、夜明け前から活動を始めるカラスにはあまり効果はなかったようです。捕獲や巣の撤去に関しても「かわいそうだ」という意見も多く、実際、少々捕獲したところで減ることもないので、やはり私たちが生ゴミの絶対量を減らす努力をすることと、ゴミ出しのルールを守ることが必要でしょう。
 まず、生ゴミの絶対量を減らすこと。それには、
  1. お店で食べきれないほどの食事を注文しない。
  2. 必要以上の食料品は買わない。
  3. 材料を無駄にしないように料理を工夫し、無駄な量を作らない。
  4. 料理は残さず食べる。
、、、という、少し前なら当たり前だったようなことを、私たちがちょっと気をつけて実行すれば、かなりの量の生ゴミを減らすことができるでしょう。
 そして、ゴミ出しのルールを守ることです。ゴミ置き場に生ゴミを放置しないこと。妨鳥ネットやゴミボックスがあれば、その中にきちんとゴミを納めること、、、です。カラスが餌にしているのは、夜間から放置された生ゴミです。カラスが活動する時間帯に生ゴミが放置されていなければ、カラスがそれを餌とすることもありません。
 、、、とは言え、現代人の生活様式は多様化し、今まで通りのルールを一方的に押し付けられても、それを守るのがなかなか難しくなっているのは確かです。誰もが朝から夕方まで働き、夜は寝ているというわけではありません。いくつかの選択肢を設け、自分のライフスタイルに合ったルールを選べるように、行政でも努力していただきたいと思います。
 「そんな面倒なことをしなくても、カラスがいっぱいいて困っているなら、殺してしまえばいいじゃないか」とお思いのかたもいらっしゃるかもしれません。しかし、日本は法治国家であり、むやみに野生動物を殺すことは犯罪です。昭和38年に制定された現在の『鳥獣保護及び狩猟に関する法律』では、すべての野鳥の狩猟が禁止されていますが、ハシブトガラス、ハシボソガラスを含む29種の野鳥は狩猟の対象に指定されています。
 では、誰でも狩猟ができるかと言えば、そうではありません。都道府県で行われる講習を受け、狩猟許可証を受けた人だけが狩猟をすることができます。では、許可証があればいいのかと言えば、そうではありません。銃で狩猟を行うならば、銃砲所持の許可を得なければなりませんし、限られた狩猟期間内で、鳥獣保護区や銃猟禁止区域、休猟区を除く場所でしか猟はできません。もちろん、市街地や公道、社寺内では狩猟はできません。また、一人が一日に狩猟できる量にも制限があります。
 狩猟以外で野鳥の捕獲ができるのは、農作物の被害を受けている場合や人間に危害を及ぼす恐れがある場合に申請を出して行う『有害鳥獣駆除』があります。日本では毎年、狩猟と有害鳥獣駆除によって40万羽以上のカラスが捕獲されています。捕獲ということは殺されているということです。
 東京都でも毎年数千羽のカラスが殺されています。しかし、カラスは一向に減る様子はありません。北海道の札幌の場合はほとんどがハシボソガラスですが、毎年約6000羽のカラスを捕獲してもカラスの増加に歯止めをかけることはできていません。唯一、捕獲によってカラスの数を減らすことに成功した北海道の池田町では、1万羽いたカラスを5年間かけて述べ1万7600羽駆除したそうです。元の数より多くのカラスを駆除しなければ、数を減らすことはできないのかもしれませんね、、、。
 人間と野生動物との摩擦は、カラス以外でもクマやサルなどを対象に起っています。しかし、どの場合にも相手の動物が人間に悪意を持っているわけではなく、私たち人間が自然のルールを無視して行動することから起きているのです。私たちは、自分たちに都合の悪いことがあるとすぐに“排除してしまえ!”と考えがちですが、カラスの巣の中にも小さな命が宿っているのです。私たち人間も、地球上で野生動物と共に生きているのだということを忘れないで、このカラスという風変わりな隣人とも何とか折り合いをつけながら暮らしていけたらいいですね。
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