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ヘビ伝説
 私たちがヘビに対して恐れを抱くのは、なぜなんでしょう? 遠い昔の祖先たちが、毒蛇や大蛇に怯えて暮らしていた記憶が、DNAに深く刻み込まれているのでしょうか? 犬にかまれたことのある人は、犬が嫌いになるかもしれません。しかし、ヘビにかまれた経験のある人は、そんなに多くはないと思うのですが‥‥。旧約聖書でも、アダムとイブが禁断の果実を食べることになるのはヘビのせいということになっています。ヘビに嫌悪感を抱くのは、人間の本能なのでしょうか。
 人はヘビを恐れるとともに、また畏敬の念を抱き、古くから世界中の信仰の対象ともなっています。子どもの頃、じいちゃんから「ヘビは家の守り神ぢゃ」という話を聞いたこともありますし、ヘビを神として崇める神社も数多くあるのです。日本だけではなく、洋の東西を問わず、ヘビに関する信仰や伝説は数えきれません。
八俣大蛇[やまたのおろち](日本の神話)
 おそらく、日本で今も昔も一番有名なヘビ話でしょう。「その目は赤加賀智(あかかがち)の如くにして、身一つに八頭八尾あり。」ヤマタノオロチの目はホオズキのように赤く、一つの体に八つの頭と八つの尾をもっています。スサノオに酒を飲まされて、ヘロヘロになったところをやっつけられてしまいます。ヤマタノオロチの体内から出現した剣は、「アメノムラクモノツルギ」であり、皇位継承の神器となっています。
三輪山伝説(日本の神話)
 奈良県の三輪山は、山自体がご神体です。現在でも禁足地、つまり足を踏み入れてはいけない場所。古事記では、イクタマヨリビメのもとに夜毎通ってくる男の衣に、ある日赤い糸を通した糸をつけて、翌朝糸をたどって行くと、三輪山にたどりつきます。日本書紀では、ヤマトトトビモモソヒメノミコト(長い!)の夫である大物主神(オオモノヌシ)は、夜しか姿を見せず、「朝も一緒にいて下さい。」とお願いしたところ、「では明日の朝、おまえの櫛箱の中にいる。どうか私の姿を見ても驚かないように。」で、翌朝、姫が箱を開けてみると、中に小さな蛇が‥‥。
虹の蛇(宮古群島の伝説)
 昔、人間は「スデ水(若返りの水)」を浴びて脱皮をしていました。ある日、天の神である太陽が、「セッカ(ヒタキ科の鳥)にスデ水を運ばせようとしたところ、「アウナズ(虹)」が現れてスデ水を捨ててしまいました。アウナズは太陽と月の怒りをかい、それ以来、太陽とは反対側の空に出るようになったのだそうです。宮古島では虹を「ティンパウ」とよびます。「ティン」は「天」、「パウ」は「ハブ」です。他にもいろんな言い伝えがあり、虹と蛇の関係は深いようです。字も似てるし(?)。
ツユザエモン(日本の伝説)
 ツユザエモンさんは、普段は岩の割れ目に姿を隠していますが、梅雨になると姿を現します。しかし、全部見せるわけではなく、初期には頸部、中期には胴部、後期には尾部と変化していきますが、頭としっぽの先端は絶対に見せません。個人的に家で祀っている人もいます。ツユザエモンさんは、赤いヘビといわれ、非常に祟りやすく、祀ってある近くの草や木を切ってはいけません。
影取池(日本の伝説)
 昔、影取池という池があり、そこに影が映ると池の主に影を取られ、死んでしまうと言われていました。ある日、長者の娘がこの池に吸い込まれてしまい、池を埋めてしまうことになりました。八分がた埋めたころ、急に嵐が起こり大蛇が現れ、裏山の崖の穴に入り込みました。その後、崖崩れが起こり、その数十年後、崩れた跡から大蛇の白骨が出てきたそうです。その骨を村のある家で祀ったところ、その家は代々栄えたということです。
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福蛇(朝鮮の伝説)
 梁允済さんの家は貧乏でした。ある凶作の年、食べ物に困った梁さんは、となり村の廬座主の家に行き、米でもアワでも、食べ物をを貸して欲しいとたのみました。座主は庭に積んであったヒエを一背負いくれました。そのヒエのなかにヘビがいました。梁さんは「福蛇」に違いないと大事に連れて帰り、ヘビの居場所を作って祀りました。それ以来、梁さんの家は栄え、座主の家は衰退。梁さんが亡くなるとヘビは三女の家に移り、今度は三女の家が栄えたということです。
三枚の蛇の葉(グリム童話)
 ある若者が戦場で手柄を立て、国王の一番の家来になります。国王には美しい王女があり、若者は王女と結婚します。まもなく王女は亡くなり、屍を墓に納める時、若者も一緒に連れて行かれてしまいます。ある日蛇がやって来ます。若者はその蛇を剣で3つに切り裂きます。やがて別の蛇が3枚の緑の葉をくわえて現れ、切られた蛇の体をつなぎ合わせて、傷口にその葉をのせます。すると死んだはずの蛇が生き返り、元通りになってどこかへ行ってしまいます。若者はその葉を拾い、王女の口と目にのせます。すると王女は生き返り、墓から出ることができました。
イブを騙した蛇(旧約聖書)
 蛇にだまされて禁断の果実を食べてしまったために、アダムとイブは“死ぬ”ことになってしまします。それを知った神様は蛇に呪いをかけます。「おまえは一生の間腹這いになって歩き、大地の塵を食わねばならない。わたしはおまえと女の間、おまえの子孫と女の子孫の間に敵対関係を置く。彼はおまえの頭を踏み砕き、おまえは彼のかかとに食い下がる。」
蛇含草(江戸小咄)
 ある日、二人の大食いでそば好きの男が、山の中で蛇が男を呑むところを見ます。お腹の大きく膨らんだ蛇は、草むらである草を探して食べます。すると膨らんでいたお腹が元通りになります。それを見ていた二人はその草を消化のための薬草だと思い、持って帰ります。大食い自慢の二人はさっそくそば屋に上がり、そばの食い比べを始めます。死にそうになるほどそばを食べた二人は、薬草を食べます。しばらくしてそば屋が見に行くと、そばが二人、羽織を着てすわっていましたとさ。
ヘラクレス(ギリシャ神話)
 ゼウスの妻であるヘラは、赤ん坊のヘラクレスのもとに2頭の大蛇を送ります。しかし、ヘラクレスは大蛇を簡単に絞め殺してしまします。大人になったヘラクレスは、アルゴスの王にかけられた12の難題のひとつとして、アタマが100もある水蛇「ヒドラ」を退治します。
 ギリシャ神話には他にも口から火を吹く怪獣「キマイラ」や、髪の毛が蛇でできているゴルゴン姉妹の「メドゥサ」などが出てきます。
 ‥‥とまぁ、少しだけご紹介しましたが、きりが無いので、このへんでやめておきます。
(参考文献:小島瓔禮 編著「蛇の宇宙誌」東京美術発行)
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